白い

嘘と事実が7:3です

闘牛士から男性器へ再就職した友人

友人の横田が彼女と別れた。

横田に彼女が出来た当初は、性欲の塊のこいつによく女なんて出来たな、何の弱み握ってんのかな。なんて思ったのを覚えている。リベンジポルノの前倒しってなんて言うんだろう、とも。いま調べたら普通に準強姦らしいです。軽犯罪者横田。

実際のところは弱みなんて握ってなくて、普通に告白して普通に付き合ったとのこと。これにはすごく助かった。友人が裁判にかけられる様子は見たくないので。握られてるのはどうも横田の性器くらいのもんだったらしい。

横田の自慢気な様子に興味をそそられて「じゃあ彼女って誰なの?」とメンヘラ女みたいな質問を飛ばすと横田は自慢げにこう答えた。「同じクラスの大木戸」

ワーオ。思わず言葉を失った。この大木戸という少女、17歳にして既に30代後半ほどの貫禄をもった表情をする女の子だった。具体的にはフォーリンラブというお笑いコンビの女の方によく似ていた。有体にいえばブス。佐々木希を引き合いに出すなら松坂牛と闘牛くらいの差はあった。

そんな闘牛、もとい大木戸と横田が付き合ったという話は面白くてしかたがなかった。何せこの大木戸という女、両親が拵えた穴を最大効率で使用して学年のマドンナ軍に参入したいう強者である。親が泣いてるぞ。世間一般で言えばヤリマンと称される女と友人が付き合い始めた話。まず浮かぶのは「羨ましい」とか「おめでとう!」では無く、「性病検査させた?」とか「腹に経産線ついてなかった?」とかそんな質問だったのは自明の理だろう。

ただ友人にそんなことを聞いて縁を切られるのも馬鹿馬鹿しいので「ゴム付けなね、痒くなってからじゃ遅いから。」とだけ伝えておいた。喧嘩になった。

ただそれ以降、横田は希代のヤリマン、もとい動くオナホール相手に上手いこと立ち回っていたと思う。週末は出かけ、一緒にプリクラを撮り、晩ご飯を食べて、夜は体を重ね。僕には到底マネできやしない、特に最後とか。ゴム3枚は重ねると思う。

それでも女心は秋の空、といったもので健闘の甲斐なく横田は振られてしまった。「他に好きな人が出来たって…」としょんぼり落ち込むその姿は、角に刺し貫かれて血反吐を吐き出す闘牛士のようだった。

そんな横田に闘牛は蹄で蹴り詰るが如く、追撃を仕掛けてきた。曰く電話が来たそうだ。「は?好きな人が出来た?そんな嘘まだ信じてたのかよバーカ!」と。横田、轟沈。大木戸女史の心は彼女の女性器と同様、深い深い漆黒に染まっていたらしい。そんなダークソウルの一撃を受けて我らが友人横田はノックアウトされたようだった。3日はオナニー出来なかったって。性の権化たる横田が3日もオナニーしないのは、9.11と同じレベルの大事件だ。つまりそれほど横田は心に大きな傷を負ってしまった。

そんな横田に僕たちが何が出来るのか。何か助けになれないかと友達同士で話し合う。僕たちは必死に5分ほど考えた。その結果「高いオナホあげれば元気出すでしょ、横田だし」という横田の人権がどこにもない案が採用された。僕たちの目に彼は一本の男性器としか映っていなかったようだ。

1週間後、天下のAmazonから届いた救援物資を横田に手渡す。「家に帰ってから開けろ!」厳しく念を押して家に帰らせた。翌日の横田、すげえすっきりした顔で学校来ましたね。マジかよちょろすぎるぞ横田。どうやら彼は本当に男性器でしかなかったらしい。彼の脳髄は亀頭に収まっている。

暫くたったある日、「元カノ、もういいのかよ」と僕が聞くと横田は晴れやかにこう言った。「あいつのマンコよりオナホの方が気持ちよかったわ!何かあいつの汚かったし!」いっそ清々しいなこいつ。総括するとブスと無理して付き合うより高いオナホ買った方がマシって話です。横田だけかもしんないけど。

そういえば今日聞いたんですけど横田オナホ使いすぎて穴あけてぶっ壊したらしいです。どうするんだろう、これから。横田が手ごろなブスと交尾して性病貰ってたらまた書きます。

それでは。

恩師へ贈る感謝の手紙

僕の担任は浜田という男だ。身の回りの登場人物が男ばかりで嫌になる。

浜田は僕が高校二年生の頃から、担任を請け負っている。生徒が男だけなら担任も男。男やもめとはこういう状況を言うのだろう。つくづく嫌になる。

まず浜田はチンパンジーによく似ている。もちろん似ているだけで人間だ。僕たちの大切な恩師をモンキーティーチャー浜田なんて呼ばないで頂きたい。ただ確かに似ているのは事実だし、宮根誠司とチンパンジーを混ぜ合わせたような外見をしているのもまた事実。首から上がチンパンジーの宮根を想像して頂ければ概ね間違いではない。そんな妖怪が僕たちの担任だ。

彼は生徒指導の厳しさで教育委員会から一定の評価を受けているともっぱらの噂の男である。生徒からの心なき声の中には「委員会のおじさんにケツを売って評価を稼いでいる」という根も葉もないものまであった。全くひどい話だ。まぁ言い出したのは僕だが。

そんな指導し甲斐のある可愛い生徒たちを、2年間も面倒を見る羽目になってしまった浜田だが、ここ最近どうも様子がおかしい。特に奇行に走っているわけでも無いが、何やら今までに比べるとそう、有体にいえば甘くなったのだ。優しい言葉が増えた、生活指導がずいぶんと緩くなった、あげていけばきりが無いが、以前の彼からするとまるで考えられない言動の数々だった。気持ち悪。

両親が事故で死んだとか、そういうショッキングな出来事があったならば唐突に態度が変わるというのも分かる。しかし彼の人生がそんな鮮やかなドラマで彩られたという話は聞かないので、恐らく僕たちの指導に心身共に疲れ果てたという説が最も有力だろう。なんだか可哀想なので、この場を借りて彼に謝罪の手紙をしたためようと思う。

 

浜田先生へ

いつも愛のあるご指導、誠にありがとうございます。本日は3つほど申し上げたいことがありまして、筆を取らせて頂いた次第です。

まず一つ目は、浜田先生のお名前を「浜田→浜田氏→中田氏→中出し」というクソしょうもない変換で玩具にしていることです。最近では「Mr.膣内射精」という一見意味の分からない呼称まで生まれる始末です。不思議に思うかも知れませんが、貴方の事です。クラスメイトには私の方からキツく言っておきますので、どうかご容赦ください。

2つ目ですが、浜田先生のファッションであられるヘアワックスでツンツンに立たせた髪型を、あろうことか「歳食ったフグ」と形容していることです。浜田先生は弱冠34歳という年齢でおられるのに「歳食ったフグ」では失礼が過ぎますね。これからはしっかりと「逞しいヤマアラシ」と呼ばせて頂きます。こちらも大変申し訳ありませんでした。

3つ目、最後となりますがこちらは謝罪ではなくお祝いとなります。浜田先生は最近ご結婚なされたそうですね。聞くところによると奥様のお腹には、第一子となる新しい命が宿っているとか。一生徒の私ではございますが、お祝いの言葉を述べさせて頂きます。チンパンジーと人間の子となる浜田先生のお子さん。オスかメスかはまだ分かりませんが、浜田先生のお子さんならば、きっと丈夫な北京原人が生まれてきてくれることでしょう。早くもこちらに石槍を投げつけてくる様子が目に浮かぶようです。母子ともに健康に生まれてくれる事を心よりお祈りしています。

それでは長々と失礼致しました。これにて結びとさせて頂きます。これからも私たちにご指導ご鞭撻の程、どうかよろしくお願い致します。

敬具

 

完璧だ。これを見せたら浜田もきっと喜んでくれるだろう。ところでいま調べたところによると、チンパンジーの握力って200kgあるらしいですね。日本国内で顔面を握り潰された怪死体が発見されたら、きっと僕です。ニュースに出てたらそっとお祈りしといてください。

さようなら

偶然出会った未来的バンドが好きすぎた

皆さんはInsutagram、使ってますか?僕は使ってます。

僕は概ね、知り合いの知り合いくらいの人間と形式上繋がっておく、そんな感じに用いている。「わしな、お前の事あんま知らんけど興味はあるんだぜ?」というポーズを取りたいが為に、Iphoneのホーム画面に半年ほど居座らせているアプリ。それが僕のInsutagramへの評価である。

さて、そんな間借り野郎でも入れ損にして置くのは勿体ないので、時々気が向いた時にはタイムラインを覗くようにしている。今日も知らん奴の犬のツラでも拝むか…。そんな気持ちでアプリを立ち上げると、なにやら見慣れない通知が。訝し気に通知欄をタップするとそこにはこんな文字が浮かんでいた。

「ARODOUR:ARODOUR∴(@ardour_ardour)さんからフォローリクエストがあります」

は?誰?少なくとも僕の知り合いにこんなファンキーな名前のやつはいない。ひょっとしたら知り合いの知り合いの知り合いくらいのスーパープレーで、外人の方と繋がってしまったのかもしれん。そんな事を考えながらARODOER:ARODOER∴とやらのアカウントを開くと、vioはこんな感じ。

「日本のフューチャリスティックロックバンド アーダーアーダー です!」

ワオ、シンプル。なんだかエキサイト翻訳から丸ごと引っ張ってきたような文体で不安を覚えさせられた。正確にはこの文面よりも先に、英文で同じ内容のことが書いてある。もしかしたら海外ファンが多いのかしら。ただ逆にそれがエキサイト感を増長させている。こいつはやべぇ。僕の頭に早くも警報が鳴り始めていた。

そもそもフューチャリスティックというワードに聞き覚えがない。いま調べたらどうやら「未来的」という意味らしい。未来的なロックバンド?ドラベースの軽音バージョンってこと?

正直言ってこの時点では毛程の興味も沸いていない。それどころか、vioに書いてある「日本の」という単語に嘲笑の念さえ覚えていた。まずはエキサイト感を隠せ。ともかくこんな未来的だか猫型ロボットだかよく分からんバンドに用はないんだよ。僕は知人の知人のブスがあげてる自撮りを見て、「こりゃひどいなぁ(笑)」って思うので忙しいんだ。邪魔すんな。

そんな風に思いながらタイムラインの検閲に戻ろうとしたその時、指が滑って彼らの動画を再生してしまう。うわ、時間の無駄した。そんな3秒後が頭をよぎる。

え?何これめっちゃかっこいいじゃん。ごめんなさい、今までの全部訂正します。めちゃくちゃ好きなタイプの音楽でした。

 

まず僕はラウドロックが好き。その好きなラウドが基礎として置かれている。そこからまず美味しいんだけど、そこに加わるノイジーなイントロ、バックで鳴り続けるキャッチーなリフ。そしてメタリックに歪んでいるにも関わらず聞き取りやすい歌声、合間合間に挟まるシンプル故に意味が通り易い英歌詞。

実はすっごいこの手の曲に弱いんです僕。大好き。すぐにフォロー許可した。フォロバもした。Twitterでもフォローした

未来的というフレーズもこの曲にぴったりと合致している。最初は全く意味が分からなかったが、聞いてみればなるほど、未来世界での死という概念をイメージした曲らしい。

更に先程から行っているTwitterでのDMのやり取りから推するところによると、この歌詞には「今までの自分を壊してこそ新しい世界が切り開ける」という裏の意味まで込められているらしい。それを踏まえて聞くと「科学と感情の壁は誰にも壊せない」というフレーズが、反語のような新たな響きを持ってくる。味わい深い歌だ。

 

どうやらARODOER:ARODOER∴さん、まだこの一曲しか発表されておられんようだ。これからの活動をガンガン追いかけていきたい。Insutagramやってて初めてよかったと思う。

何はともあれフューチャリスティックなロックバンド、ARDOUR:ARDOUR∴ 。ラウドロッカーに鼻をドラえもん総集編で殴られたとか、そういう類のトラウマが無いのなら是非とも聴いて頂きたい。

こちらからは以上です。

 

ちなみにTwitterInstagramはこちら

 

 

馬鹿な性欲魔人の買い物に巻き込まれた話

「でも俺、やっぱりTENGAが欲しかったわ」

友人である横田の口から出た一言だった。

 

横田とは僕の友人だ。高校入学時から一緒にいるので、もうかれこれ3年の付き合いになる。彼は母の腹から頭よりも先に性器を出したんじゃないか、と思うほどに性欲に塗れた男だ。その性欲の強さは友人の間でも折り紙付きである。「俺、最近性欲無くなってきたんだよね…」と暗い表情で語る彼に「じゃあ最後にオナニーしたのはいつ?」と聞くと「うーん、昨日の朝かな?」という返答が帰ってくるような男だった。うーんって何だよ。悩むな。

 加えて彼は頭が非常に悪い。脳の容量の7割を性欲の処理に割いているために、中学1年生レベルの英語すらもおぼつかない。don'tの使い方が未だによく分かっていないらしい。枕に書いた彼のセリフも正しくは「でもおれ やっぱりテンガがほしかったわ」である。横田の脳に漢字は存在しない。そんな男だ。

 

彼が男性用ジョークグッズ(以下TENGA)を欲しがったのには海より深い、そして潮風より不快な理由がある。

僕は今日、友人たちの買い物に付きあって原宿へと足を運んでいた。メンバーの内訳はイケメンの明智、性欲の横田、そして僕、という構成になっている。なにやら横田が古着を欲しがったので暇な僕たちが巻き込まれた、というわけだ。

 

週末の昼過ぎからブラブラとサブカルの街を練り歩き、古着屋を巡った。2軒、3軒と店を回ったが、横田のお眼鏡に叶う服は見つからない。ここもダメか、と次の店へとテクテク歩いていたらば横田の足どりがピタリと止まった。それも何の前触れもなく、だ。どうしたんだよ、早く行こうぜ。そう声をかけると奴はこう言った。

「今日の金でさ、TENGA買うのって、ダメ?」

輝かんばかりの笑顔だった。

僕と明智はそれはもう必死に止めた。「いい訳ねぇだろ!」「古着はどうした!」「死ね!」「殺すぞ!」3年間で五本の指に入るほどに必死になって友人を説得した。そんな説得(罵倒)の甲斐あって横田は考え直し、「ごめん、どうかしてた」と呟いた。僕と明智が胸を撫でおろしたのは言うまでもない。

時刻は変わって夕方、明智は帽子を買い、僕は外人からジャケットを貰った。横田の手元には何も無かった。そろそろ諦め時かな、なんて僕が考えていると横田がまた阿保なことを言い出した。

「やっぱりさ、ひひ、渋谷のドンキでTENGA買おうよ」

だからいい訳ねぇだろうが!もはや付き合わされているという意地から僕たちは声を荒げた。しょぼくれる横田。「いいじゃん…俺の金じゃん…」とかほざきやがる。そういう話じゃねーよ。

三人の間に険悪なムードが漂い始めたので『古着屋をハシゴする』という当面の目的は、誰かが提案した『とにかく飯を食って一息つく』に変わった。とりあえず近くにあったラーメン屋に入り、食券を買う。すると横田がまたも驚愕の一言を放った。

「あーあ…これで残り200円か…」

待てや。お前今日いくら持ってきた?

「1500円だけど?」

バカじゃないの。何買うつもりだったんだよ。そんでもってラーメン大盛980円だろ。残りの320円なんだよ。

「メンマと煮卵」

メンマと煮卵食うな。

 

僕たちは満腹の腹をさすりながら店を出た。なんだかんだ言っても食事という行為は偉大で、横田の愚行に対する苛立ちはどこかに消え去っていた。みんな笑顔で最寄りの駅へ向かっている。電車に揺られて地元の駅へとたどり着く。

 

「なんだかんだ今日楽しかったな帽子買えたし」「俺も外人から服貰えたから得したわ」意味わかんねーよ、あははうふふ。そんな楽しい会話で一日が終わろうとしていた矢先。件のアホが余計な最後っ屁を放った。

「でも俺、やっぱりTENGAが欲しかったわ」

直後に明智の拳が性欲スカンクへと飛んだ。腹に深刻なダメージを負った横田は、その場に蹲って呻く。呻く。頼む、これ以上余計な事を言うな…。しかし祈りも空しく、横田はぼやいた。

「でも買えたもん…2本」

明智のハンドハンマーと僕の蹴りが、蹲った性の権化の背中と太ももに吸い込まれていった。唸り声をあげる横田をその場に置き去りにして、僕と明智は自宅へと歩き始めた。

 

横田が性欲魔人なのは分かっていた事だが、まさかここまでとは。TENGAに対する情愛がこんなに深いとは思っていなかった。付き合い方を考え直す必要があるかもしれない。

 

けど横田、痛そうだったな…。あんなでも友達だもんな……。

僕の中の良心がズキズキと痛みはじめる。そうだ、TENGAあげて仲直りしよう…。

iosのAmazonアプリを開く。ごめん、横田…。許してくれ…。そんな気持ちを込めながら検索バーにTENGAの文字を打ち込んだ。 

そこには、

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810円(参考価格)+810円(参考価格)=1620円

 

2本買えない。

成人先輩と終活星人

今日バイト先の先輩の佐藤という男から「俺来週の月曜で20歳なんだよね」と伝えられた。皿洗いの最中で耳から入る情報に上の空だった僕は、「あぁ」とか「へぇ」の中間みたいな相槌を返した。すると佐藤は「なんだよー祝ってよー」みたいな事をほざく。特に無視する話題でもないので「おめでとうございます」と言うと「ありがと!」とはにかんだ笑みが返ってきた。

 

そんなやり取り以降、僕と佐藤の間で20歳という節目に対する考え方の討論が始まった。

佐藤曰く「20歳から人生が始まる。結婚とかするんだろうし、やれることだってどんどん増える。これからが楽しい」ようだ。

対して僕は「20歳からは老後。終活で忙しい。身体も弱るし出来ることも少なくなる一方。」という持論を展開させた。

 佐藤は僕のそんな考え方を「歪んでいる」と称し指さして笑った。僕の導火線に『人に指を指すな』という本題とは全く関わりない火がついた事で討論は論争に変化した。

 佐藤が言うところによると「お前は結婚できなそう。気遣いとか出来んし」らしいが、ちょっと待ってくれ。誰もが誰も結婚したいと思っておりやしませんか?

 

この世に生きる全員が同じゴールを目指して生きている、なんて考えるのはサイコパスの発想だ。少数派も居ることを念頭に置いてほしい。少なくとも両親の関係があまりよろしくない僕に結婚願望は無い。『結婚は人生の墓場』なんていう言葉が指すとおり、結婚したら自分を縛るものが増えるんだろう。デメリットしかない気がする。

 

そう伝えると佐藤は「メリットデメリットで結婚について考えるのがナンセンス。自分が好きな人と一生一緒にいれるなんて幸せ」と何処ぞのラッパーみたいな事を口にした。こいつは頭がお花畑だ。素直にそう思った。

 

結婚に関しての話し合いは10分ほど続いたが、最終的には「お前の顔が悪いから結婚願望もないんだよ!!」という佐藤の一言に収束した。ただの悪口だろそれ。納得が言ったわけでは無いが、実際ブスの僕に返せるものは無い。佐藤は顔がいい。バッタの体液を擦り付けたい。

 

続いては『20歳を過ぎたら出来ることが少なくなる』という話し合いに花が咲いた。佐藤は「法の観点から言ってもさ、やっていい事が増えるんだから楽しいじゃん。国のお墨付きだよ?」と19歳フリーターの分際で法学生の様に宣う。

確かにこの日本という国家は20歳である事に対して重い責任を負わせている。喫煙、飲酒、エトセトラ。そんな少々のメリットと重たい枷をつけられる。20歳からは大人というレッテルを貼られて日本人という種族は社会に送り出されるわけだ。

 

ここで聞いてほしい。確かに、確かに20歳から出来ることは増える。しかしこんな話を聞いたことは無いだろうか。

 『体感時間的に20歳までが人生の半分』

これだ。例え出来ることが増えたとしても、残った時間はあと半分。グラフで言えば落ちの曲線を描くだろう。そんな状況で「やったーやりたい事がやれるわーい!」なんて騒げるのかね。僕には無理。20歳超えたら既に老後だ。

 

それを伝えるや否や、佐藤は馬鹿正直に深刻な顔を作った。追い打ちをかけるように「あと3日で佐藤さんの人生半分ですよ」と囁いてやると、佐藤は難しい顔をして「そうか…老後か…」と辛気臭いセリフを口にした。けしかけといて難だけど、定年間近のおっさんみたいで非常にウケた。 

あと1歩で佐藤の心を動かして何をするにも慎重派のつまらん人間に出来る。そんな邪な目的を持って、次に何を言ってやろうか、なんて考えあぐねていると店の壁掛けタイマーがけたたましく鳴り響いた。14時だ。佐藤はぱっと顔を上げると「もう上がりじゃんあはは」と先程までの表情が嘘のように笑った。

 

「それじゃ誕プレ待ってるね~!」そう言い残すと、佐藤は足取り軽く更衣室へと消えていった。誰がやるか。お前の彼女、別の男とディズニー行った写真インスタに上げてたぞ!死ね!

チラリと横合いに目をやれば、途中から放棄した洗い物が山のように積み上がっていた。

 

今はこの文章を、真っ暗な部屋のソファに寝っ転がって書いている。無機質な機械の光は視力の低下を加速させそうだ。後ろの窓を見やると、カーテンの隙間から春らしい朝日が差し込んでいた。家の前を通る国道からは、既に様々な活動の音が聞こえ始める。窓を開けば雨上がりのアスファルトの香りが滑り込んできた。

あと2年半で僕も人生が半分終わる。残った時間であと何回こんな朝を迎えるのか。気が付けばそんなことを考え始めていた。寝不足だと感傷的になる。なんだかとてもキモいのでもう眠ろう。

だいぶ遅れてやってきた眠気に身を任せたい気分なので今日はこの辺で。

それでは。

微生物転生希望者の志願書

イケメンが嫌いだ。

 

男子の比率が圧倒的に多い高校に通う経験上、男社会の中で顔がいいと言うのはそれだけで美徳だと刻みつけられる。女に持てると言う一点で相当な地位が約束されるのだから。おこぼれにあやかろうという奴や顔のいいお仲間、面食いのホモ。メスが相手でなくとも様々な意味でよくモテる。その分の割を食うとまでは言わないが一緒にいると劣等感で瀕死の重傷を負う。心に。

 

引き換えブスはどうだろう。自分と顔が同じレベルの奴なら気が楽でいい。同じ部屋で過ごしても顔レベルの差でジリジリと殺されていくなんてことは無い。自分より下ならモアベター。見下すだけで心の安寧が確約される。古くから今、東から西に至るまでブスというのは見下す相手を探しているのだ。

 

詰まるところはブス最高。イケメンは死ね!出席番号順に死ね!デスビーム!ドーン!!

 

さて、イケメン諸兄に置かれましてはご逝去なされただろうか。今を持ってこの空間は醜男醜女の天下となった。選ばれしエリートブスの皆々様、御機嫌よう。みんなでお手手を繋いで生き残ったイケメンを皆殺しにしよう!

 

こんな風にブスというのはイケメンを恨み、嫉み、僻みながらもやっとこさ生きている。それこそが日陰者の習性というものだ。僕が言うんだから間違いない。

ではイケメンの方はどうだろう。ブスをどう思っているのだろうか。

 

見下して気持ちよくなっている?ノー。仲良くしようと対等になる努力をしている?ノーノー!

 

ベストアンサーは「概ね無関心」だ。彼らの視界に僕らは居ない。時折物好きがデカい岩をひっくり返して蠢く僕らを笑うだけ。僕らは虫だ。

 

そんな僕らにとって天敵とも言える彼らだが、タチの悪い事に彼らに悪意は全くない。地面を歩く蟻に「は?何歩いてんの?殺すぞ?」なんて思いますか?思いませんね。それと一緒。

 

加えてイケメンというのは往々にして性格がいい。人間は生まれ持ったカードを切って生きていくしかない生き物だ。端から手札にワイルドカードが加わった彼らの性格を歪めるものが存在するのか。否だ。彼らの性格の良さに手札がブタの僕らは歯噛みするばかり。

 

イケメン、美女、奴らの顔に掛かれば短所も途端に長所に取って代わる。

 

頭が悪い→天然なんだー可愛いところあるね!

運動が苦手→知的で素敵!

暗い→クール!

うるさい→明るい人なんだよ!

 

エトセトラエトセトラ。この有様だ。全くもって羨ましい。美男美女という群れは無敵だ。正しく向かうところ敵無し。世が世ならば百万石の武将だろう。

 

そんな現代の武将共に僕らが対抗するにはどうしたらいい?身だしなみに気を使う?僕らに必要なのは最低限の清潔さだ。髪型?ゴミの上に綺麗な花を乗っけてマシになりますか?口臭を気にする?歯を磨くのは文明人のルールだ馬鹿が。

 

要するに僕らに逆転の一手など存在しないのだ。かいしんのいちげきをお見舞いしてもひのきのぼうで敵のHPは0にならない。僕らは人生の初手から詰んでいた。

 

人生を変えるのに選べる手はたった一つ。リセマラだ。言い方を変えればスーサイド。来世という淡い希望に縋るか、現世という昏い絶望に別れを告げるか。意味は人それぞれだが、僕らは人生をリセットして、来るかどうかも分からない新しい世界を期待するしかない。

 

それでは僕はこれからよく締まるロープと蹴って倒せる踏み台を買いに行こうと思う。次回はミドリムシくらいにはなれたらいいな。男女とか無いらしいし、光合成で食っていくとかやってみたいしな。

それでは御機嫌よう皆さん。イケメンは死ね。