白い

嘘と事実が7:3です

微生物転生希望者の志願書

イケメンが嫌いだ。

 

男子の比率が圧倒的に多い高校に通う経験上、男社会の中で顔がいいと言うのはそれだけで美徳だと刻みつけられる。女に持てると言う一点で相当な地位が約束されるのだから。おこぼれにあやかろうという奴や顔のいいお仲間、面食いのホモ。メスが相手でなくとも様々な意味でよくモテる。その分の割を食うとまでは言わないが一緒にいると劣等感で瀕死の重傷を負う。心に。

 

引き換えブスはどうだろう。自分と顔が同じレベルの奴なら気が楽でいい。同じ部屋で過ごしても顔レベルの差でジリジリと殺されていくなんてことは無い。自分より下ならモアベター。見下すだけで心の安寧が確約される。古くから今、東から西に至るまでブスというのは見下す相手を探しているのだ。

 

詰まるところはブス最高。イケメンは死ね!出席番号順に死ね!デスビーム!ドーン!!

 

さて、イケメン諸兄に置かれましてはご逝去なされただろうか。今を持ってこの空間は醜男醜女の天下となった。選ばれしエリートブスの皆々様、御機嫌よう。みんなでお手手を繋いで生き残ったイケメンを皆殺しにしよう!

 

こんな風にブスというのはイケメンを恨み、嫉み、僻みながらもやっとこさ生きている。それこそが日陰者の習性というものだ。僕が言うんだから間違いない。

ではイケメンの方はどうだろう。ブスをどう思っているのだろうか。

 

見下して気持ちよくなっている?ノー。仲良くしようと対等になる努力をしている?ノーノー!

 

ベストアンサーは「概ね無関心」だ。彼らの視界に僕らは居ない。時折物好きがデカい岩をひっくり返して蠢く僕らを笑うだけ。僕らは虫だ。

 

そんな僕らにとって天敵とも言える彼らだが、タチの悪い事に彼らに悪意は全くない。地面を歩く蟻に「は?何歩いてんの?殺すぞ?」なんて思いますか?思いませんね。それと一緒。

 

加えてイケメンというのは往々にして性格がいい。人間は生まれ持ったカードを切って生きていくしかない生き物だ。端から手札にワイルドカードが加わった彼らの性格を歪めるものが存在するのか。否だ。彼らの性格の良さに手札がブタの僕らは歯噛みするばかり。

 

イケメン、美女、奴らの顔に掛かれば短所も途端に長所に取って代わる。

 

頭が悪い→天然なんだー可愛いところあるね!

運動が苦手→知的で素敵!

暗い→クール!

うるさい→明るい人なんだよ!

 

エトセトラエトセトラ。この有様だ。全くもって羨ましい。美男美女という群れは無敵だ。正しく向かうところ敵無し。世が世ならば百万石の武将だろう。

 

そんな現代の武将共に僕らが対抗するにはどうしたらいい?身だしなみに気を使う?僕らに必要なのは最低限の清潔さだ。髪型?ゴミの上に綺麗な花を乗っけてマシになりますか?口臭を気にする?歯を磨くのは文明人のルールだ馬鹿が。

 

要するに僕らに逆転の一手など存在しないのだ。かいしんのいちげきをお見舞いしてもひのきのぼうで敵のHPは0にならない。僕らは人生の初手から詰んでいた。

 

人生を変えるのに選べる手はたった一つ。リセマラだ。言い方を変えればスーサイド。来世という淡い希望に縋るか、現世という昏い絶望に別れを告げるか。意味は人それぞれだが、僕らは人生をリセットして、来るかどうかも分からない新しい世界を期待するしかない。

 

それでは僕はこれからよく締まるロープと蹴って倒せる踏み台を買いに行こうと思う。次回はミドリムシくらいにはなれたらいいな。男女とか無いらしいし、光合成で食っていくとかやってみたいしな。

それでは御機嫌よう皆さん。イケメンは死ね。